【インタビュー】「地域と関わり自分を知る」

みなさんは、地域の企業や団体と学生が一緒になって取り組む「地域密着プロジェクト」をご存じですか。

島根大学地域人材育成コースの学生を対象とした専用プロジェクト、通称「コープロ」は、学生が地域の課題に向き合い、実際に現地で活動することで、地域とのつながりを深めながら実践的な学びを得る取り組みです。今回、その一環として、一般社団法人umiにて4名の学生を受け入れ、8月上旬から2月下旬までの約半年間、雲南市に通いながら活動を行いました。

今回は、umiのプロジェクトに取り組んだコープロ生の4名にお話を伺いました。

今回取材した大学生

左から黒谷さん、勝部さん、新宅さん、尾添さん

■尾添里帆
大学:島根大学総合理工学部建築デザイン学科1年生
出身:島根県松江市

■新宅二皐
大学:島根大学総合理工学部建築デザイン学科1年生
出身:鳥取県米子市

■勝部聡太
大学:島根大学総合理工学部建築デザイン学科1年
出身:島根県安来市

■黒谷博樹
大学:島根大学材料エネルギー学部1年生
出身:島根県美郷町

活動内容

━━今回のプロジェクトで取り組んだ内容について教えてください

勝部)一つは大原森林組合さんとumiさんが連携した活動です。大原森林組合さんから林業の担い手不足という課題を伺いました。その課題に対して、大学生の自分たちができることはなんだろうと話し合って、若者に届くように動画を作成しようと決まりました。

黒谷)もう一つは、umiさんが若者の滞在拠点「うみのいえ」として運営する予定の古民家の改修作業に取り組みました。プロジェクトが始まった当初はまだ物件も決まっていませんでしたが、プロジェクト開始後に突然のご縁から物件が決まったそうで、お片付けや壁塗りをしました。

林業の「知らない世界を知る」

━━大原森林組合さんとの活動について教えてください

新宅)大原森林組合さんから林業の担い手不足という課題について詳しくお伺いしました。林業業界は、大原森林組合さんに限らずどこも担い手不足で、課題解決のためにポスターや動画が作られていたりします。中でも動画は、学生目線でもかっこいいなと思うものがたくさん作られています。だけど「私たちが同じようなものを作っても埋もれてしまうよね」とか、「動画はかっこいいけれど、そもそも林業について知らないよね」とか、意見がでて、林業を知らない人に向けた動画を作ろうと決まりました。ターゲットは、大原森林組合さんと相談して、高校2年生向けに「知らない世界を知ろう」のテーマで動画を作りました。

━━「知らない世界を知ろう」っていうテーマだったんですね

尾添)私たち自身は、そもそも企業さんと関わる機会が全くなくて、大原森林組合さんとお話しするのが企業さんと関わる初めての経験でした。学生視点の意見をお伝えしたり、何気ないお話しをしたり、すごく緊張したんですけど、大原森林組合さんも気さくに話しかけてくれて、笑顔が溢れる場面もたくさんありました。総じて楽しかったですし、その楽しさの先にたくさんの知らない世界が溢れているなと、私たち自身が感じることができました。このような実感を、動画の視聴者さんにもして欲しいなと。

勝部)お話しを聞くだけでなく、私たちも林業の知らない世界を知るために現場に行きたいと思いました。そこで、大原森林組合さんにお願いして、現場の見学をさせていただき、複数の種類の機械が動いている様子を見るだけでなく、そこで働いてる方にお話を伺うこともできました。現場の見学を通して動画の構成イメージも深まり、その後何度か撮影のために現場へお伺いすることがあったのですが、作業されているみなさまがとても気さくな方ばかりで、林業だけでなく、今の仕事に辿り着いた経緯などもお伺いすることができ、私たち自身も将来を考える上での参考になりました。

━━動画製作、大変ではありませんでしたか

尾添)編集する前に、撮影も自分たちでやるので、どういう映像でどういった画角がいいか、ってところから始まって何が必要か考えるのが結構大変で、何回も同じ場面を撮ったり、素材になるものを全部撮ったりするのも大変でした。

黒谷)あとは、なかなかみんなの予定が合わなくて、自分たちが思うように進められなかったよね。

新宅)日程決めは苦労したよね。でもケンカはなくてみんなで仲良く活動できました。

勝部)ケンカはなかったよね(笑)

尾添)だねだね。編集もみんなでやるので、役割分担をして作業をするのが一人でやるよりも難しかったです。でもその分時間は短縮できたから、今振り返って考えると良かったとも思います。

DIYを通して人と関わる

━━滞在拠点「うみのいえ」の活動についても教えてください

勝部)雲南市には学生をはじめ若者がたくさん訪ねてくるにも関わらず、若者の滞在拠点がないという課題をお伺いしました。そのためにumiさんが若者の滞在拠点をつくろうとしていて、umiさんと一緒に地域の空き家関連の会議に参加したり、若者や雲南市のためにどのような場が必要なのかを話し合ったりしました。コープロの活動が始まって2ヶ月程度経った頃に、たまたまのご縁で物件が見つかったそうで、その後お片付けや壁塗り等のDIYなどに取り組みました。

━━活動の中で、印象に残っていることはありますか

新宅)私はやっぱり、壁塗りですね!壁を塗るなんてなかなかできない体験だったし、みんなで笑いながら作業するのがとても楽しかったです。

黒谷)壁塗りもそうだけど、自分たち以外に色んな人が手伝いに来ていたし、ひとつのものを作るのに様々な大人が関わっていて、そこでコミュニケーションの大切さを学べて、自分はそこが印象に残っています。

自分の「ニガテ」に気づき・向き合う

━━プロジェクトを通して、自身の変化があれば教えてください。

尾添)今回はチームのリーダーとして取り組みましたが、実は自信がないタイプなんです。自分の考えで進めていいのか不安になっちゃって。だけど、敢えてリーダーになることで、みんなを引っ張らなきゃ!という責任感が芽生え、積極的に質問しなければと行動しているうちに、自然と質問がどんどん湧いてくるようになったことは変化したことですね。

新宅)私は、人前で発表することや考えを言語化するのが苦手でした。なので、打ち合わせやヒアリングでメモを取る係になりましたが、相手の伝えたいことを分かりやすく要約したり、状況を分かりやすくまとめたりする中で、気付いたら言語化の練習になっていて苦手意識がちょっと薄まったように感じました。

勝部)自分は、高校まであんまり外交的じゃなくて。っていうか、今もなんですけど(笑)でも、普段関わることのできない企業の方や地域の方と関わる機会があって思いがけず知らない世界を知ることができたし、せっかくならいろんな考え方に触れたいと思って自分から質問することを心掛けました。

黒谷)僕は、今までこういったチームで物事を進めるときに、自分がどういう役回りをするべきなのか分からなかったのですが、今回の活動で副リーダーとして尾添さんが苦手なことをサポートする機会があり、自分がリーダーのアシストに向いているかもしれないという考えに変わりました。

やさしいまち

━━それでは、最後にこの記事を読んでくれている方に一言お願いします!

新宅)私は大学の授業が無かったら地域に出て活動しようって思えないタイプなんですけど、自分のためになることがたくさんあったから、ぜひ他の大学生にも参加してみて欲しいです!

黒谷)自分もそうだったけど、大変なことでも当たって砕けろ精神でやり遂げるとなんか色々変わったりするから色々やってみてね。

勝部)雲南は優しい人ばっかり!本当に優しい人しかいないなっていう印象です。だから、チャレンジしようとしたら、絶対にサポートしてくれるなって思います。

尾添)わかるわかる。ここに来たらだれとでも繋げてくれそうな感じがする。いい場所。自分で考えることも大切だけど、人に頼って一回聞いたりした方がいい案も出るので、どんどん質問していこうって伝えたいです。