「高校生の時は、地域愛はなかった。」 そう語った大学生が、”恩返し”の情を抱いたワケ
今回は雲南コミュニティキャンパス(以下U.C.C)での大学生の活動を紹介するために、私たちは琉球大学に在学中の金城愛弥さんにインタビューを行いました。彼女は社会学を専攻する傍ら、地域創生の観点から自身の地元である沖縄県の歴史や文化についても学んでいます。彼女の口からは、自分の思いに正直で現在の彼女の沖縄での活動につながる、U.C.Cでの思い出話を聞くことが出来ました。
金城愛弥さんがU.C.Cで活動することになった理由
沖縄県が出身の金城さんは、琉球大学では社会学を専攻し地域創生と琉球学も履修している。まず私たちはそのルーツを尋ねてみた。
取材班「なぜ数ある中から、社会学や地域創生・琉球学を専攻したんですか?」
金城さん「私は琉球大学でマイノリティが生きやすい社会について研究したいなと考えていました。大学入学までは地域愛にはあまり関心がなく、せっかく地元の大学に進学したので沖縄のことを学びたいという理由から、地域創生・琉球学を副専攻に選びました。その後、琉球大学での二年生までの学習や、三年生の時に島根県でU.C.Cの一員として、地域をフィールドに大学生として活動していく中で、沖縄への愛着が深まっていきました。」
取材班「高校時代まで地域愛のようなものが無かったことは意外です!中高生の時から地域のことについてとても関心があるものだと思っていました。琉球大学での活動を経て、地域への思いが芽生えて大きくなったんですね。沖縄生まれ、沖縄育ちの金城さんが島根県に訪れることになったのはどういう経緯があったんですか?」
金城さん「琉球大学は国内留学の制度があります。同じ日本でも沖縄県と他の都道府県では、風景や生活様式が異なるので、入学当初から長期間沖縄県外で暮らす経験をしたいと思っていました。なので国内留学は即決でした。選択肢は島根大学しかなかったので、必然的に島根県に行くことになりました。島根大学へ留学をしたのは、大学3年生の時です。島根県は地域創生の取り組みが盛んと言われているので、実際に現場を見てみたいと思っていました。こうして1年間の国内留学が始まりました。」
取材班「そのような制度があるのですね!しかし、島根大学のみという点で、運命的なものを感じますね(笑)そこからさらにU.C.Cで活動することになったのはどのような経緯からだったんですか?」
金城さん「島根大学で、学生が地域に出て活動するプログラムの説明会があって、その説明会に出席した時に見つけたU.C.Cの活動のチラシを見た時に、『地域でチャレンジしたい大学生集まれ!』『課題先進地でしか体感できない学び』というフレーズに、琉球大学での二年間は大学の外の学びを大切にして活動していた私は惹かれました。課題先進地といわれる島根県ならではの学びに興味があったので、すぐに、U.C.C事務局の担当者の方をを捕まえに行きました(笑)これがきっかけになって、三年生の夏は、U.C.Cの活動の取り組みの一つである、地元企業への実践型インターンに参加することになりました。」
取材班「なるほど。この出会いもまた運命的ですね!」
U.C.Cでのインターンシップ活動について
こうして始まった、金城さんの活動。参加したのは、約1ヶ月間受け入れ先の一員となって課されたミッションに挑戦する、実践型インターンシップというものだ。インターン先はFELICEという事業所で、『くもゆいマルシェ』というイベントの企画のアップデートをおこなったとのこと。その活動についても尋ねた。
取材班「『くもゆいマルシェ』とはどのようなイベントなんでしょうか?」
金城さん「まず、マルシェとはフランス語で『市場』という意味です。今回の『くもゆいマルシェ』とは、『地元で休日を楽しみ、地元でみんなが集まる場所』を作りたいという想いで開催しているマーケットイベントです。雲南の『ヒト』と『コト』を結んで繋ぐ、モノを売るだけではない『誰かの日常が輝く舞台』となるような多機能な市場を目指しています。地域の人たちがお店を出店したり、子供から大人まで楽しめるイベントコーナーがあります。私は8月と9月、12月の月に一度の合計3回、マルシェの運営に携わりました。」
取材班「なるほど!マルシェとはいえ、ただモノを売るだけでないというところにこだわりを感じますね。その中で金城さんはどのような活動をされたんですか?」
金城さん「主な活動は、インターン期間中に開催された2回のマルシェの運営です。全体のタスク管理や会場設営、広報に関することまで幅広く活動しました。そもそもマルシェの取り組み自体が初めてのことで、私が運営に携わった8月のマルシェが第一回目の開催でした。FELICEという会社のメインは雲南市に3店舗展開している、飲食事業です。『人々の幸せを追求するサービスを提供することで、地域社会への貢献をめざすこと。』を理念に掲げおり、2019年度からFELICEは、本格的にまちづくり事業にも取り組むようになりました。よって、『マルシェの定期開催に向けて企画をアップデートせよ!』というミッション達成に向けて、初回から報告書を作成して実績の可視化を行い、協力者を増やすという狙いを持って、定期開催を見据えた実績を残すための報告書の作成を提案、実施しました。また、12月のマルシェについては、インターン終了後も実行委員として運営に携わりました。」
取材班「初開催のイベントということで難しい部分もたくさんあったと思うんですが、インターンの活動において心がけたことは何ですか?」
金城さん「『マルシェの定期開催に向けて企画をアップデートせよ!』という自分に課せられたミッションをこなすことを第一としていました。その中で、ただの開催実績だけではなく、データとして記録を残すことが後々活きてくると考えていたので、過去に報告書の作成や記録継承の取り組みの経験をしていた私は、社員の一員となった覚悟で、インターンを自分事として日々取り組んでいました。常に成果を出すために自分にできることは何かを考えていました。」
取材班「FELICEでの活動の際に、金城さんはFELICEの社長と会議をおこなって、自分の思いをはっきり伝えることで、金城さんの活動はさらに前に進めたと聞きました。社長と会議まですることは、ハードルが高く抵抗があったのではないかと思います。その原動力を教えてください。」
金城さん「大きな事をした。という実感がなかったので、抵抗はありませんでした。事業所全体が一つのアットホームな環境で、従業員の方も家族のように気さくに話しかけてくれて、自分の意見が言いやすかっただったことと、インターンの活動を通じて、社長との信頼関係が構築されたことが要因です。そして、インターン報告会では私の長所は物事を自分事としてとらえて行動に移せることだと事業所の社長から教えていただきました。そのおかげで、今までは自分事として行動することが、当たり前のことだと思っていた私は、自分の長所について客観的に見つめ直すことにつながりました。」
取材班「自分の得意なことを意識できると、ならこういうコトをやってみようという風に次の目標がたてられるのがいいですよね。インターンシップで体験したことが、その後に生きたことはありましたか?」
金城さん 「現在は休学して、ある団体のコロナ禍における市民活動調査事業と、コミュニティ財団のコロナ支援助成金事業のアルバイトをしているのですが、インターンの社員としての覚悟を持って事業に携わるという経験と、常にプロジェクトの成果を出すために自分ができることは何かを考えて、できることを実践するというサイクル、タスク管理や企画の運営をしたことで身に着けた自信があるからこそ、スムーズに仕事ができているなと実感しています。」
取材班「そこまでしかりされていると、自分の働き方や就職先についててはっきりとしたイメージを持たれてそうですが、社会人になった時の夢や目標はありますか?」
金城さん「私は学生時代にお世話になった大人の方々と一緒に仕事をすることを、目標にしています。仕事で認めてもらえるような成果を出して、その方々に恩返しがしたいです。そう思うようになって、沖縄だけではなく1年間で私を育ててくれた島根県の人々の顔も浮かんできました。こうして私は、沖縄と島根を繋ぐ仕事をしたいと思うようになっていきました。」
金城さんが同世代の若者に伝えたいこと
取材班「金城さんのように自分の将来につながる活動をしたい大学生に向けて、一番伝えたいことを教えてください」
金城さん 「『とりあえずチャレンジ』してみる!です。私は、最初は地域創生がしたいと思っていたわけではないですし、インターンも大勢の一部になるような感覚があって避けていました。ですが、U.C.Cのインターンに参加することで、とりあえず経験してみたことが、後々の自分のしたいことをするときに活きてくるので、少しでも興味のある事には『とりあえずチャレンジ』してみてほしいです。」
取材班「金城さんのように、これからU.C.Cの活動や、他の地域創生に取り組もうと思う人にむけて伝えたいことは何ですか?
金城さん 「『楽しんで活動すること。』です。やっぱり、楽しまないと長続きしません。楽しそうなことには自然と人が集まってきます。地域創生の取り組みは、『人と人のつながり』が大切になります。また、持続可能性がないと効果が出ないと思うので、まずは、自分が楽しむことを意識して、仲間を集めることが大切なのではないかと思っています。」
編集後記
金城さんの言葉の中で印象に残っている言葉がある。
「仕事での理想と現実の比率は3:7ですね。」
私は、普段の生活ではついつい理想ばかりを追い求めてしまい現実的ではない活動をしてしまいがちだ。もちろん理想を掲げることは大事だが、理想ばかりでなく現実的かどうかも実践型インターンシップを通して学んだという。
また、これからの理想や夢も教えてもらうことができた。継続的に雲南や島根県に思いをはせながら、離れた場所への関わり方を模索しているのだ。
私たちは今回の取材で「考えて悩むよりまずは実践・挑戦してみる」ということを学んだ。初めての取り組みに不安を抱くことは誰しもある。しかし、そこで立ち止まって考えに老け込むのではなく、とりあえず今の自分にできることから始めてみることが、何かを成し遂げるうえで大切だと感じた。
『とりあえずチャレンジ』し続けた成果は、金城さんの笑顔を見ると明らかである。私たちは、彼女を手本にして自分の未来に向かって歩み続けたい。
追手門学院大学経済学部 原野紘希
島根大学生物資源科学部 清水茉耶