離れていても出来たこと、離れたからこそ見えたこと
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、初のオンライン開催となった雲南コミュ二ティキャンパス(以下U.C.C)。オンライン化による恩恵は、地理的な制約がなくなったこと、大学の長期休暇期間以外での参加が容易になったこと等であり、例年ではあまり見かけない大学からの参加が多い2020年度であった。そんな中、昨年の春に県外に出たばかりの地元出身者からの参加もあった。コロナ禍という不測の事態の中で、彼女たちは一体何を感じ、考えたのか。U.C.C事業「うんなんチャレンジラボ」の1つ、KUNOラボに参加した二人の学生に話を伺った。
うんなんチャレンジラボの詳細はこちら→http://www.co-unnan.jp/ch-wakamono_page.php?logid=2062
今回インタビューしたU.C.C学生
■狩野真弥(19)
・高知大学人文社会科学部国際社会科コース1回生
・島根県雲南市大東町出身
・高校でのアメリカ留学を機に島根の地域活動に関わるようになる。雲南の人の良さに気づいてから雲南が大好きになる。
食べることが大好き。
■山根若菜(19)
・愛媛大学農学部生命機能学科1回生
・島根県雲南市木次町出身
・大学入学後、U.C.Cをきっかけに島根の大学生コミュニティに関わるようになる。
雲南市の雲南市の好きなところは空気がきれいで人があったかいところ。
オンラインでも、ここまでできることを実感
今回2人が参加した「KUNOラボ」は、雲南市大東町久野地区の地域づくりを推進する組織「久野地区振興会」と連携し課題解決策を探るプロジェクトである。今回のテーマは、旧久野幼稚園を改装し新しくなった交流センターで、地区外から訪れる人にとっても魅力的な地域活動を行うこと、地区住民と地区外からの来訪者との交流機会も増えていくことを可能にする手段を参加学生が考案するというもの。
一ヶ月という長いようで短い期間の中、毎週2回以上のオンライン会議を実施、中間報告会を経て、地域住民、他プロジェクト参加学生や市役所職員の前で最終報告会を行った。最終報告会では、一年を通して久野を楽しむという観点から地域資源を活かした四季折々のイベントを企画。また春訪れた人が夏に、夏訪れたことある人が秋に、というような参加者が継続的に参加したくなる仕組みや、「クノフル」という全体的なコンセンプトも合わせ提案した。
(↑最終報告会で用いたスライドを一部抜粋)
━まず率直にKUNOラボに参加した感想を聞かせてください。
山根:いろんな大学の人と繋がれることにワクワクしました。当時は人と会うことが難しい状況だったんですけど、オンラインで他の大学生とつながることができました。みんなで合間を縫って集まって会議を繰り返して、最終報告会でそれを褒めてもらえたのがうれしかったです。
自分は今まで地域の課題解決に関わってこなかったんですが、真弥ちゃんやU.C.Cでの繋がりが他の活動にも繋がっていきました。始まりを作ってくれたU.C.Cに参加できたことが全体を通して良かったです。
狩野:私も一番よかったのは新しい出会いがあったことですかね。高校から続けていた活動はメンバーが固定化されてしまってたんですけど、U.C.Cは急に知らない人ばっかりになって(笑)、それが新鮮でした。これまで関わってきたことがない人だからこそ、自分とは違う考えを学べて楽しかったです。この経験を経て、もっといろんな人と関わりたいと思えるようになりました。久野の皆さんも、私たちが最終提案で発表したをキャッチコピーをその後のイベントで使ってくださって嬉しかったです。
━うんなんチャレンジラボには幾つかの受け入れ先がありましたが、KUNOラボ(久野地区振興会)を選んだ理由はなんでしたか?
狩野:まず企業よりも地域に関することをやりたいと考えていました。久野は他の地域と比べて取組内容の自由度が高かったことや、関わる人数が多い方がいろんな意見がでて面白いことができるんじゃないかな?と思ったので、学生も地域の方も参加している数が多いKUNOラボに決めました。
(↑受け入れ先の久野地区振興会の皆様)
山根:最初に引かれたのは課題の部分で、新しい交流センターを使ってなんでもしていいよという自由度の高さに惹かれ、企画をやったら楽しいかも!とはじめました。あとは久野のおばちゃんたちに親近感が湧いたのも理由の一つです(笑)。
━およそ一ヶ月間、最終提案に向けてプランを練られたわけですが、活動中のラボの雰囲気はどうでしたか?
狩野:学生メンバーが4人いたんですけど、それぞれがそれぞれのいいところを出していました。私は思いついたことをパッという人でした(笑)。中間発表でまだまだだってなって、それをきっかけにお互いがもっと力を発揮するようになりました。ちなみに議事録係だった若菜ちゃんは影のまとめ役で、みんなの意見をうまくまとめてくれました(笑)。
山根:私もお互いが足りないところを補い合えていたというか、このメンバーでやることが面白いと感じていました。議事録担当だったので、皆の発言をまとめていく中で、いいなと思った発言をどうやったら役に立てるのかを模索していました。
━オンラインだからこその難しさみたいなものはありましたか?
山根:オンラインで良かったのは、地域に関わる方法が、現場に行かなくてもここまでできるということを実感できたことで、県外に出ても地元との関わりを持ちたいと思っていた私には、それが何よりの収穫でした。ただ、やっぱり熱量が伝えきれなかったり、メンバーともオフラインならもっと距離が深まったりしたのかなとも。オンラインだと、コミュニケーションに少し壁を感じてしまって。内輪話や雑談などの隙間から距離が縮まることってよくあると思うんですけど、雑談の時間も、ちゃんと雑談の時間として取らないといけなかったりでなかなか難しかったですね。
狩野:私は学生メンバー同士もそうなんですけど、久野交流センターの皆さんとの意思疎通がうまくできていなかったりで、同じ場所にいてちゃんと質問しないと伝わらないんだなと思いました。でもオンラインだったことで、これまで雲南と関係のなかった人と関わることができたのは良かったです。他の学生が自分の地元雲南にだんだん興味を持っていく感じとか面白かったですね。
外での学びが地元をより良く
━お二人とも県外に進学しながら雲南での活動に参加されたわけですが、地元に残るという選択肢についてはどうお考えでしたか?
山根:私は中学生の頃から県外に出たいと思っていました。大きいショッピングモールや遊園地みたいな、そういう場所を求めていたわけではなくて、地元以外のいろんな人ととも触れ合って視野を広げたいと思ってました。県外に出てから地元が好きだったんだなと気づきました。
狩野:私は場所へのこだわりは特になく、進学できたらいいかなと…(笑)。ただ高校生時代の留学をきっかけに、外で学ぶことが地元をよりよくすることにつながると気づいて、県外に進むことを決めました。男女格差問題に興味があったことや、人口の規模が島根と似ていることなどもあって高知大学を選びました。
━大学入学前から地域に関わる活動はされていたんですか?
狩野:私は地域活動には、部活や習い事でボランティアとして参加したくらいでした。ただそれ以外にも、中学の先輩の留学報告会を聞いてから高校で絶対留学すると決めて動いてました。もともとは英語を学びたくて留学を希望したんですけど、この経験から今は語学というよりも日本の社会課題の解決に向けた先進的な事例として海外の取り組みなどに興味があります。
留学から帰ってきてからは、マイプロアワードに参加しました。学校の中で自分はすごい人みたいな扱いをされたんですけど、マイプロには商品開発や市町村ぐるみで活動している高校生がいて、自分ももっと頑張りたいと思いました。あと、市からの留学支援を受けるための審査会面接を通して周りの人に自分のやりたいことを話していったり、いろんな国際交流関係の人のお話を聞く中で、こんなに自分に協力してくれる人がいることを初めて知って、そういった想いの重なりから、積極的に雲南市内の活動に参加するようになりました。
山根:私はガッツリ地域活動に携わったことはなかったです。高校進学してからは放送部と茶道部を兼部していたんですが、放送部での取材で、地域で活動する同級生への取材を通して面白そうだなと思ってました。高校の時に印象に残っている出来事は、スピーチコンテストの経験から英語が面白いと気づいて、雲南市の姉妹都市であるアメリカのリッチモンドへ行くことにしました。日本食と海外の食の違いを知りたいと思って、留学へ行く前後にボランティアで海外の人と話したり、英語を子供たちに教えてみたりする経験から、他の市にもこんなことを経験できることがあるのか?と考える中で雲南を意識したのも覚えています。
あと、高1の時から受験に向けて、勉強を頑張っていて、高3の時に塾に通い出して真弥ちゃんと出会いました。ただ、日常的にあまり話すことができない塾だったので、顔見知り程度で特に仲良くなるとかはなかったです(笑)。でもまやちゃんが面接の練習をしている様子をみてすごいなと思ってました。
━では、U.C.Cに興味を持ったのはどのタイミングでしたか?
狩野:高校生の頃から、U.C.Cの存在は知っていて大学生になったら参加しようと決めていました。知り合いの先輩に聞いたりしつつ、U.C.Cの情報を集めながら、そんなに仲良くなかったのに、若菜ちゃんに急に連絡しました(笑)。その後、U.C.Cの座談会に参加して、KUNOラボに参加しよう!となりました。
山根:最初の始まりはインスタのストーリーに「大学生活頑張ろう!」と上げてからで、真弥ちゃんから「お互い四国だから頑張ろう」「てかU.C.C知ってる?」と急にメッセージが来て、U.C.Cってなんだろう?ってなりました(笑)。大学もオンライン授業だし、時間もあるし、高校の時に空いた時間を何かに使いたいと思っていたんですが結局使えなかった経験もあって後悔していたので、大学では頑張ってみるか!と思って参加を決めました。
━顔見知り程度の関係だったのに声をかけて、しかもその誘いに乗ったのも面白いですね(笑)。お二人とも他の方を誘ったりはしなかったんですか?
狩野:自分でもなんで若菜ちゃんを誘ったかわからないんですけど、若菜ちゃんなら参加してくれると確信していたからだと思います。嫌々ではなくて、本当にやりたい!と思ってくれているという確信があって、KUNOラボ参加後も他の雲南の活動に参加してくれて、誘って良かったなと思ってます。
山根:私はいきなり地域のことを話して相手にどう思われるか不安で、他の人を誘っても本心でやりたいと思ってくれないんじゃないかと。他の人に活動について聞かれることはあったんですけど、紹介しても次に繋がることはなかったですね。でも真弥ちゃんは話したらわかってくれて、びっくりしました(笑)。
狩野:他の人に言ったところで、すごいねでおわって、次につながることが少なくて虚しくなることがよくありました。でも若菜ちゃんとは、他の友達にできないことを話せて、今でも時々そういう話を長電話したり(笑)。お互いの意見が違っても、お互いを受け容れることができるので、本当に良い関係性だなと感じています。
やってみてから、好きか嫌いか
━今後チャレンジしてみたいことや、やってみたい活動等を教えてください。
山根:やってることが学部の専攻と全然関係ないと周りから言われるんですけど、自分の興味関心は大学でやって、よくしていきたいなと思うことはこういった活動でしていければなと。自分でもできそう、乗り越えられそう!という思いの繋がりが大事かなと思うので、そういう経験を少しずつ積み重ねていきたいです。
狩野:今回初めて地域課題のことに関わって、自分の興味や意外と好きだなとか、違うなとかがわかりました。高校までは国際系の活動ばかりだったけれど、今後はいろんな活動に積極的に参加して、出会いを増やして人との関わりを大きくしていきたいです。
━それでは最後に、この記事を読んでいる方に向けてメッセージをお願いします!
狩野:一見、地域系に興味がある人だけに向けた活動のように思えるかもしれないですけど、私はどんな活動でも何かの学びがあると思っています。やってみて地域系は違うな、という話だったらそれでいいと思いますし、人を通して学べることもあると思っています。最初の一歩として深く考えることのできるいいプログラムになっていると思うので、そんな「とにかく何かしたい!」という人はもちろん、私が大事にしている「出会いや繋がり」が絶対に生まれるので、自分の中の常識を変えて、いろんな考えを知っていくことを大事にしてほしいです。
山根:やらず嫌いではなくて、やってみてから好きか嫌いか、面白いかどうかを決めるのが大事だと思いました。真弥ちゃんが言ってたみたいに、地域課題の解決という印象が強いかもしれませんが、自分が一番学んだのは自分がどういう役割ができるのかとか、そいういう具体的な部分が勉強になったし、それと同時に県外に出た身として、地元雲南に改めて向き合う良い時間になりました。なので迷っているなら、参加してみてほしいなと思います。
(取材・編集:U.C.C事務局)