学生の今、一歩踏み出す勇気 ~チャンスは自分で作る~
やってみよう!決めるのは自分自身!!!
「何かやりたいけど何をやればいいのか分からない。」
そう考えている学生の方は少なくないと思います。そこで、過去に参加された大学生の方のお話を聞き、このプロジェクトの面白さを読者の皆さんにも知ってもらって”何か”に対する1つのきっかけになればと思います。
今回取り上げる”イイトコ発見プロジェクト”は大学生が雲南市の地区に数日間滞在し、地区の方とのコミュニケーションや催し物への参加を通して参加学生それぞれの視点で地区の「イイトコ」を1人毎日15個以上発見します。人数や日数を重ねると、合計で何百というイイトコが表れ、これを最終的に分析し、地区の方に共有することで地区の魅力を改めて知ってもらい、発展していくためのアイデアを考え、提案していくプロジェクトです。
お話を伺ったのは過去の参加者である茶圓晃平さん。茶圓さんはもともと東京の国際基督教大学教養学部に通っていたが、イイトコ発見プロジェクトの参加をきっかけに地域医療に興味を持ち、地元鹿児島大学医学部に転学。転学後も学生スタッフとして同プロジェクトに参加した。
Q.イイトコ発見プロジェクトへの参加したきっかけはなんですか?
A.偶然U.C.Cの職員の方からプロジェクトの紹介をされて「楽しそう」といった興味本位で参加したのがきっかけでした。
本来は10人程度で行いますが、僕が最初に参加した地区はイイトコ発見プロジェクトの開催が初めてで、トライアルとして少人数で取り組まれていたこともあり、比較的すぐに参加出来ました。 僕は鹿児島出身で大学進学をきっかけに上京しました。なので島根は縁もゆかりもない場所でしたがこれをきっかけに、自分の本当にやりたいことを見つけられたので参加してよかったと思っています。
プロジェクトへの参加
1日の流れは①〜④の通りです。
①3,4人のチームに分かれて地区を散策。
②外で農作業をされている方や、お宅を訪問し地区住民の方と話す。
③会話の中から「イイトコ」を見つける。
④地区散策から戻ってきたら参加者全員で「イイトコ」をシェア
地区を歩いていると農作業をしている方や、縁側に座っているおばあちゃんというように、必ずどなたかに会うんですね。そういう出会った人に声をかけて楽しく雑談します。
最終的にその地域のイイトコを聞き出して意見を集めていきます。
見つけ出したイイトコはラベル(付箋)に書き出して、夜に他の参加者のみんなと共有します。地区の人から聞いたイイトコだけでなく、自分が1日の中で感じたイイトコも書いていきます。1日1人15枚は書くように決まっているので最終日はすごくたくさんのラベルが集まっていましたね。
町の方からは「田舎だし何もないよ」という意見が多くありましたが、中には「自分が作っている作物」であるとか「地域で守っている神楽が誇り」という声もあがっていました。
Q.茶圓さん自身が感じた地区のイイトコは何でしたか?
A.地域の方同士の繋がりが一番印象に残っています。例えば採れた作物を分け合ったり近所の子供たちの面倒を見てあげたり。都会の大学に進んで近所の方との付き合いがない分、地域同士のコミュニティの強さは田舎こそのものだと感じました。
Q.イイトコ発見プロジェクトに参加して地区に対するイメージは変わりましたか?
A.もちろん変わりました。元々鹿児島の田舎出身者なので、高校の時まで田舎に対して古い印象を持っていました。それもあって東京の大学に進学したんです。でも雲南市の方や参加した大学生たちと触れ合って、多くの方々が地域を変えようと努力してらっしゃるところを目の当たりにしてはっとしました。これまで自分が地域に目を向けていなかったのではないか、もっと探していくと魅力的なものを見つけられるのではないかと思いました。田舎があんまり好きじゃなかったんですけど、このイイトコ発見プロジェクトに参加して田舎の良さや可能性に気づきました。
「やっぱり医学部に行きたい」
なんとなく参加したイイトコ発見プロジェクトをきっかけに、茶圓さんは医学の道に進むという大きな決断を下すことになります。
Q.当時の茶圓さんを鹿児島大学医学部に転学させたきっかけは何だったのですか?
A.元は受験生の時に自分のやりたいことがよくわからなかったので国際基督教大学に入学しました。志望していた国立大に受からなかったし、入学時点で専攻を決めなくていいので、入学してからいろいろなことを経験して今後を決めようと思っていました。医学部に興味を持ち始めたのは、元々「人の役に立ちたい」という気持ちがあったからです。そしてこのプロジェクトに参加して、「顔の見える距離で仕事が出来ると素敵だな」や「自分の強みで人を元気づけたい」と思い始めました。さっき言ったように、イイトコ発見プロジェクトで地区を歩いて出会った人に話しかけるだけでなく、他にもBBQや宴会、お祭りへの参加などを通していくうちに、まるで自分が住民の一員になったかのように感じられました。いろんな方と心を交わして話をすることが田舎出身の自分にとって懐かしく、心地よく感じられました。そんな地域の中で生きる人たちのために働きたい、という気持ちが出てきました。
医学部への挑戦
『イイトコ発見プロジェクトは一夏に2つの地区で開催されるんですが、自分はその両方に参加していました。転学を心に決めたのは2回目のプロジェクト参加から帰ってきて3日後くらいだったと思います。出願の締め切りが10月で、とてもギリギリでした。受験まで残り数か月しか残されていない中、心を落ち着けて準備を始めました。大学の講義は単位を落とさない程度にこなしつつ、高校時代の知識を思い出すところから始めました。たくさん過去問を解いたのを覚えています。転学の話は両親にも相談しました。母は電話での会話で納得してくれましたが、父はそういうわけにもいきませんでした。でも合格したら納得してくれたみたいでした。勉強してた時のモチベーションは、「自分はこの道しかない。」という強い信念ですね。』
医学部生になった今
Q.今現在、鹿児島大学医学部でどのようなことを学んでいますか?
A.鹿児島大学には1年生から入りなおしたので、1年生と一緒に授業を受けながら地域医療学の研究室に入り勉強しています。内容は厳密にいうといろいろ違ってくるんですけど、1つは、イイトコ発見に似たようなことを地元鹿児島でもやっています。地域・田舎の方に泊まりに行って、住民の方に話を聞いたり、餅つき・田植えなど交流をしたとか。もう一つは、コミュニケーションの行為を分析するといったような事をしています。例えば、地域の公民館に行って健康に関することを医療学生が健康についてお話するといったような講演会を開いて、難しい言葉(専門用語等)をなるべく使わずに話す方法や、どうやったら伝わりやすくなるかを研究しています。
Q.大学卒業後、鹿児島でこれをしたい!など目標はありますか?
A.そうですね。最初、医学部に入る時は、地域のお医者さんになれたらいいなとは思っていました。ですが、いざ大学に入ったら入ったで、また違った事が見えてくることがあるじゃないですか。なんか、地域のお医者さんというと「Dr.コト―」(※)を思い浮かべたりするんですが、いざ入るとそうなるのは難しいというか、今の時代はドクターヘリが飛ぶようになったり、すべての事を一人ではできないということがわかりました。地域の方と近い立場でかかりつけ医をというのもあるんですが、今は考えている途中ですね。
※Dr.コトー診療所という、離島に生きる人々とコトー先生の愛称で親しまれる医師・五島健助と交流を情緒豊かに描いた医療マンガ。ドラマ化もされている。
茶圓さんからのメッセージ
Q.最後にこの記事を読んでくださる方々、主に大学生など学生に向けて、やっておくべきことなどについてメッセージをお願いします!
A.自分が本当にやりたいことをいかに見つけることが出来るか、チャンスを拾えるかが大事になってきます。チャレンジの連続だと思っています。少しでも興味があることが見つけることが出来たなら、挑戦してください!
編集後記
バイトや授業、課題…毎日を忙しく過ごしている学生の方が多いのではないでしょうか。しかし何もせずに学生生活を終わらせてしまってはすごくもったいないと思います。最近はオンライン形式で開催されているプロジェクトも増え、地理的なハードルも下がることで様々なプロジェクトに参加しやすくなりつつあります。
自分が興味あるもの、友達に誘われたもの、前から気になっていたもの…今学生であるうちにいろんな事にチャレンジしてみませんか?そうすることで今回の茶圓さんのように自分が本当にやりたいこと、新しい夢を発見できるかもしれません。
追手門学院大学経済学部 平井恒輔
島根大学生物資源科学部 増本千宙