【インタビュー】「表現」すること、しないこと
今回お話を伺ったのは、認定NPO法人カタリバで「まちまるごとインターン」に取り組んだ橋本さん。
大学では心理学を専攻しており、将来自分が進む道を決める手がかりをつかむべく挑戦した取り組みについて伺いました。
今回インタビューした学生
●橋本 初花さん
大学:島根大学
出身:鳥取県
雲南の好きなところ:若者のチャレンジを応援してくれるあたたかい大人がたくさんいるところ
主なミッション
受け入れ先:認定NPO法人カタリバ(雲南市教育支援センターおんせんキャンパス)
テーマ :不登校支援の現場で子どもたちのニーズをもとに、自分のやってみたいを形にしてみよう!
受入期間 :令和6年2月27日(火)~令和6年3月22日(金)
それぞれの「関わり方」から得られた学び
ー認定NPO法人カタリバのインターンに応募した動機を教えてください
以前から雲南市には不登校支援に積極的に取り組んでおられる「おんせんキャンパス」っていう特徴的な施設があるとうかがっていました。大学で心理学を学んでいるということもあり、元々「不登校支援」に興味あったので、何かしらの形で関わりたいな、思っていたところに今回のインターンシップの話を聞いて、将来、そういった分野の専門職として働くかもしれないのでその勉強にもなるし、単純にどういう場所なのか知りたいという思いもあって応募しました。
ー取り組んだ内容について教えてください
おんせんキャンパスでの1日は基本的に学校と同じ感じで、朝の会、1時間目、2時間目、みたいな感じで時間が決まっていて、午前中は子どもたちそれぞれが持ってきたワークや課題をやる学習の時間。午後は心と体の授業や、キャリアの授業など、職員さんからアプローチするような授業を行う時間。その後の時間はサークル活動、いわゆる部活動みたいな感じの時間で、それぞれが好きなことをやる時間。というのが大まかな1日のスケジュールで、私は子どもたちの隣で見守るような関わり方をしました。
ー活動に取り組んでいかがでしたか
最初は、どの距離が相手にとって1番心地よい距離だろうか、どのタイミングで声かければいいだろうか、など、どう関わっていいかわからず悩みました。日々の関わりの中で、この距離感がちょうどいいかもな、とか、これをやるとやりすぎだなとか、すごく学びが多くて、関わり方のとてもよい勉強になりました。
ーどうやって学んでいったんですか
子どもたちの反応を見てもそうですが、職員さんからフィードバックをいただいたり、職員さんの姿を見て学んだりもしました。
たとえば、学習の時間は子どもたち全員につくことはできないので、1人の子につくってことが割と多いんですけど、それでも教室に入ったときは、一旦全員の子に声をかけて回るっていうのを職員さんが実践されてるのを見て、なるほど、そうしたら1人の子だけにかまっていると思われずに全員のこと見ているよっていうのが伝わるな、って学んだりしました。
ー将来像としても参考になりましたか
はい。私が将来目指してるのが心理カウンセラー系の職業ですが、おんせんキャンパスにもカウンセラーの方がいらっしゃって、ほかの職員さんと比較すると、身体接触をしないとか、名前をあだ名で呼ばないとか、カウンセラーならではの距離の取り方やルールをもって関わっておられたので、相互を見比べて関わり方の学びになりました。
どっちも必要で、どっちが大事ということではないのですが、自分の将来に向いてるのはどっちか、とか、自分が関わりたい方はどっちか、っていうのを考えるきっかけになりました。
「表現すること」を伝えたい
ーインターンでの一番の思い出エピソードを教えてください
個別対応から全体の場に馴染む段階の小学生の女の子がいて、個別対応で1人でいる時もあれば、体育や運動ではみんなと一緒に入ってみたり、でもうまく馴染めなくて泣いて戻ってきたり、不安定な状況でだったので、私もすごく気になっていたんです。
気持ちが落ち込んでるかなっていう時は私が行って2人で遊ぶ時間を作ったり、体育の時間に不安げにしている時は隣にいるようにしたりしていました。
最初は話しかけても、首振るとか相づちとかだけだったのが、関わっていくにつれて単語で返してくれるようになって、最後の方は自分から話しかけてくれるようになったんです。
インターンの最後に「表現する」っていう授業を行った時も、終わった後にその子がトコトコトコって私の隣に来てくれて、私の授業にすごい興味持ってくれてたり、その後もたくさん話してくれるようになって、届いたのかなっていう風に思えたのが印象的でした。
ー「表現する」っていう授業はどんなことをされたんですか
私は今吹奏楽をやっていて、自分が表現することで周りと繋がれたり自分を知れたりいいことがたくさんあったので「表現するって素晴らしい」ってことを知ってもらう企画をしました。
自分が身を持って体験したから気づけるものだと考えて、まずは子どもたちに3つのお題を出しました。
①クッキーを描いてください
②時計を描いてください
③楽しいを描いてください
クッキーはクッキーでもチョコチップクッキーを描く子もいれば、スクエアだったり、割れてるクッキーや2個描く子もいるし、時計も、振り子時計や腕時計、針秒を描くとか、数字で全部描いたりとか、それぞれ違いが出るんですよね。
そこに気づいてもらって、みんな違うってことが私は素晴らしいと思う。自分の表現や個性、自分らしさが溢れてて、この簡単な絵だけでも「自分」がつまってる。
私も今までサックスで表現できて楽しい、っていう話を交えながら、表現することの素晴らしさを伝える授業をしました。
表現するってやっぱ怖いと思うし、もちろんするしないは自由なんですけど、おんせんキャンパスには表現することを受け入れてくれる周りの子どもたちもスタッフもいるから全然表現していいんだよ、していい環境なんだよ、って知ってもらいたくて。知った上で、表現したい・したくないはその子次第なんですけど、私自身は今まで吹奏楽でサックスに出会って、表現することで色々繋がれたり、自分を知れた面があったから、子どもたち授業を通して表現したらいいことがあるかも、って思ってもらえたら嬉しいですね。
悔いの残らないインターンへ
ー逆に難しかったことはありますか
職員の皆さんとしっかりお話ができる時間がなかなかとれなくて、自分が疑問に思ってたり困ったりしていたことを相談をするタイミングがなかったことですね。企画を思いついても提案までの時間がかかったっていうのもありました。
-バスの本数が少なくて時間の融通が利きづらかったですもんね
そうなんです。子どもたちと一緒のタイミングでおんせんキャンパスについて、子どもたちと同じタイミングで帰るし、お昼の時間も子どもたちと一緒に食べるので、話せる時間がとれなかったりでちょっと大変だったなと。子どもたちが帰った後に、職員さん同士で情報交換されてたと聞いたので、本当はそこまでいれればよかったんですけど。
私自身も、もうちょっと積極的に動けたらよかったなっていう後悔もありました。なので、このまま色々聞けずにインターンが終わるとさらに後悔するなと思って、職員さんに聞きたいことをアンケート収集することにしました。また、日報には自分の考えていることや相談を記載し、そうすると職員さんが丁寧にコメントを返してくださったりしました。
特に、中間振り返りでそういった悩みだったり、もっとこうしたかった、みたいな話をしたら、すぐに職員さんが動いてくださったんです。インターンの心残りがないようにやりたいことは全部叶えよう!!って。残された時間が短い中でも、私のチャレンジをたくさん支援してくださって、やりたかったことを全部やりきることができました。本当にありがたかったです。
学びたい気持ちがあれば
ー雲南市で1ヶ月暮らしてみていかがでしたか
仲良くしてくださる方が多いですね。トマトを買いに行ったときに、トマトが大好物なんですって話をしたら「5月の形がいびつなやつが美味しいんだよ」って教えてくださったり、おくいさんでご飯行ったときも、大学生のインターンにってビールを2本おごってくださったりとか。温かい人が多いなっていう印象があります。
ー最後に、今後インターンに参加する学生へのメッセージをお願いします
どのタイミングでも自分の学びたいっていう気持ちさえあれば行ってもいいと思います。
すごくいいプログラムをumiさんや市役所の方がコーディネートしてくださっているので、変に準備とか事前学習とかしてなくても、学びたい気持ちだけあればきっといけます。
今回だって、お金もらえるからとか、旅行気分で来たって人もいましたし、もちろんその裏に学びたい想いがあったとは思うんですけど。逆にそれだけを目当てに来ても私はいいんじゃないかなと。もちろん気持ちがあれば得られるものは大きいと思いますけど、そうじゃなくても学びにはなるし、学びにならなかったとしてもいい経験になるので。