【インタビュー】山に憧れ、触れて、感じる
今回お話を伺ったのは、合同会社グリーンパワーうんなんで実践型インターンシップに取り組んだ仲井さん。雲南市に来るのも林業に携わるのも初挑戦の仲井さんはどのような気持ちでその一歩を踏み出したのか。インターン中の取り組みとともに伺いました。
今回取材した大学生
●仲井 夏騎さん
所属:関西学院大学文学部文化歴史学科2年
出身:兵庫県淡路市
自分のやりたいことを1言うと5倍くらいにして返してくれるんです。
━━今回の実践型インターンシップで取り組んだ内容について教えてください。
自然エネルギーの循環と地域経済の循環を目指して活動している合同会社グリーンパワーうんなん(以下、GPうんなん)さんを中心に、林業の川上から川下までそれぞれの役割を担う企業さんと関わりました。それぞれ回らせていただいた上で、雲南市の林業を知ってもらうことを目標に活動をしました。
結局コロナの影響で短くなってしまって1ヶ月も滞在できなかったんですけど、地元に戻ってきてから、友人や会った人にインターンシップで取り組んできたことを伝えてます。周りの友人も、林業に関わったことがないし、そもそも島根は遠いところというイメージを持っていて。林業についても島根についても、僕が話す内容に驚いていました。
━━川上から川下という表現について教えてください。
林業の商品の流通を川の流れに例えて「川上・川中・川下」という表現があるんです。山や森に関わる事業で言うと、川上が造林や森林所有者などの原料供給の仕事、川中が製材所や木材加工など製品製作に関わる仕事、川下が販売を中心とした建築やバイオマス事業者といった製品提供者をそれぞれ表しているんです。雲南市にもそういった様々な事業者の方がいらっしゃるんですが、GPうんなんさんはこの流れがより循環していくための取り組みも行っているんです。
━━インターンとしてはGPうんなんに行きつつ、林業をより理解するために関連企業でも活動をされたんですね。さまざまな活動があったかと思いますが、一番印象に残ってることはなんでしょうか?
住宅販売の現場に行かせていただいた時に、受け渡しのお客さんがおっしゃていた「本物じゃないと物足りなくなる」という言葉が自分にとっては大きく印象に残っています。
━━なぜその言葉が印象に残ったんでしょう?
普段自分が勉強しているのは美学や芸術学といった分野です。例えば、絵なら版画でもみれたりしますけど、本物を見るとやっぱり違うなと感じていて。「本物じゃないと物足りない」という言葉は自分の勉強や将来やりたいことにリンクして、グッと印象に残っているというか、とても腑に落ちました。実際に見た雰囲気や質感、木の勉強をしたからこそ、ちゃんとお客さんにその本物の良さを知ってもらえていると実感しました。
━━活動を通して楽しかったことや、初めて体験したことはありますか?
たくさんあるんですが、インターンシップに参加するまでは、社会人やそれこそ林業関係の方と関わることが少なかったので、何よりそれが刺激的でした。
インターンシップ先の方とコミュニケーションの中では、自分のやりたいことを話して実際にそれがどこまでだったらできるのかを聞いたりもしてました。
自分のやりたいことを1言うと5倍くらいにして返してくれるんです。実際にものを作りたいと言ったら、間を取り持ってくださって、地域の木工所にお願いして作らせてもらえる環境を作ってくださったりしてくれました。
山に触れられて嬉しいけど、厳しい面も知ることができました。
━━今回のインターンで林業という分野を選ばれた理由を教えてください。
自分の出身地は淡路島なんですけど山という山がなくて、これまで触れたことがなかったので関心があったんです。何かやりたくて大学のインターンの説明会に行ったら林業があって、林業をなんとなく面白いと思っていた感覚あったので参加することを決めました。
━━実際に林業に携わってみて気づいたことはありますか?
僕がイメージしていた山は自然という感じでしたが、雲南市の中ではとても計画的に整備されている印象でした。整備されているところはとても癒されました。だけど、一歩間違えたら怪我するなど危なくて厳しい環境だと感じたと同時に尊敬する、いわゆる畏敬の念のようなものが自分に芽生えました。
あとはとても大変な仕事だなと。山を保有されている方とも話す機会があったんですけど、木を切ることはとても危なくて、骨が折れたりという話も伺いました。実際に山に入る機会もあって、傾斜が45度以上の山で、雪の中測量したりとか。でも足の踏み場がそんなになくて、葉っぱが腐ったりして地面はやわらかいし、斜面だから滑りやすくもなってました。山に触れられて嬉しいけど、癒される、厳しい面も知ることができました。
━━測量はどんなことをしたんですか?
木を伐採する前段階に、伐採をするための道を作る作業があるんですけど、どこにどういう風に道を作ったらいいのかというのを測量してました。ただでさえ滑りやすいのに、道がそもそもないところに作りに行ってるので、足場もなおさら悪かったですね。肉体的な疲れと、斜面は油断したら落ちるという緊張感がずっとありました。
━━何事もなく作業できましたか?
いや、滑りました(笑)枝が顔の横をかすめて行きました。笑
━━林業の川上から川下での体験を通して感じた林業の大切さを伝えていくために、商品づくりに取り組んだとお伺いしましたが、何を作られたのですか?
茶筒を作りました。インターンシップの中で、松江は抹茶を気軽に飲む文化があるという話を伺って、松江や出雲の面白い文化で、島根県だからこそ作れるものがあるかなと思って、決めました。
最初、面を組み合わせた時に蓋がちゃんと閉まらなくて、師匠に「ちゃんと設計図書いてからやろうね」と言われました(笑)なかなか思ったものができなくて、ぼてっとした作りになっちゃってましたね。
すごく薄い板を使ったりしていて、僕が使ったら割れてしまいそうで、そもそもの道具の使い方が違う気がします。力加減やどれくらい削るか。師匠は初めて設計図をみて作ってみて、あっさり作ってくれました。自分で実際に作りたかったものと、すごい人が作るとこうなるんだ、作ったものだけ見るとすごさがわからなかったけど、実際に自分で作ってみると木の薄さとか凄さがわかりました。
やればやるほどおもしろい
━━短い期間でいろいろな活動に挑戦されていますが、どのようなモチベーションで活動されていたんですか?
もともとなんとなく面白そうという気はしてたんですけど、実際に行ってみてやっぱり面白いなって。さらにインターンで関わるみなさんが林業のことを楽しそうに伝えてくださるので、それを伝えられた僕も楽しく興味深く聞くことができました。
そのお話のおかげで、生えてる木の種類が違ったり、神社の松が曲がっていたりするのだけれど、人工林の松は真っ直ぐだったなとかにも気づけたり。そういうのが楽しくて、木に触れたい、やればやるほど面白い!と思いました。
━━雲南市には最終的にどういう印象を持ちましたか?
挑戦しやすいところだなと思いました。雲南市というよりはGPうんなんかもしれないんですけど、周りの人に挑戦している人が多いということもあって、GPうんなんも受け入れて挑戦できる環境をサポートしてくださったし、何よりまず、やりたいことを聞いてくれるんです。他の事業者さんを教えてもらったり、活動団体の情報を教えてもらったりもしました。
━━まさに最初の、やりたいことを1言うと5倍で返してくれるというお話ですね。
日報を出していたのですが、それに対して一つ一つフィードバックを返してくれて、それに加えて調べておいた方がいい知識などもくださって。単に確認をするだけでなく、自分の視野を広げてくれるようなことを教えてくださいました。フィードバックを受けて、「こんなこともできるんだ!」「自分もやってみたい!」という風に思っていました。
━━最後にインターンに参加するか悩んでいる学生に向けて一言お願いします!
自分は引っ込み思案な方で、自分のしたいことをするなんてあまり考えたこともなかった。行動する前には、拒絶される怖さとかがあるかもしれないが、そんなことはありませんでした。相手が大人だからと萎縮してしまうのではなくて、自分のしたいことを積極的に話していってほしいなと思います!