みんなで灯す手づくりの光

今回のインターン先、「雲見の里いいし」は、住民主体の地域づくりを目指し「これから先もやっぱりいいし!」をキャッチコピーに掲げ活動する飯石地区の地域自主組織だ。
昨年夏にコロナ禍で行ったオンラインで地域課題に取り組むうんなんチャレンジラボでは大学生4名が取り組み、課題解決のための複数の提案をもって活動が終了したが、提案したからには自分たちの手で現地で実行までしたい!と立ち上がった2人が、今年の3月に実践型インターンシップとして「雲見の里いいし」へインターン、提案を実現に導いた。今回はインターン終了直後の学生2人に話を伺った。

今回インタビューしたU.C.C学生


■松村拓生(21)
・追手門学院大学地域創造学部地域創造学科4年
・大阪府吹田市出身
・雲南市の好きなところは「人!!食べ物が美味しすぎる!!」

■吾郷涼太(21)
・広島修道大学法学部法律学科4年
・島根県雲南市大東町出身
・雲南市の好きなところは「挑戦を応援してくれるところ」

想いが共有できればいいものができる

色とりどりの灯りでライトアップされる旧飯石小学校。平成28年の閉校を前に地域住民でグラウンドに描いた「平和を」という文字が、6年後の今再び描かれることとなった。小さな灯りは、地区内から切り出された竹を住民自らの手で加工し、灯籠にしている。この日、旧飯石小学校の周辺をライトアップした様子を一目見ようと地区内外から約120名の方が訪れた。参加者からは、「飯石でこんなことができるなんて」「こんな機会をありがとう」「関わってみると面白かった!」いろんな声が飛び交い、二人の活動は小学校だけでなく、飯石の未来にも光を灯すこととなった。

(3月27-28日に行われた竹灯籠イベントの空撮)

ー約3週間のインターンシップお疲れ様でした。まずは今の率直な気持ちを教えてください。
松村:イベント当日はすごくテンションが上がってたんですけど、今は少し落ち着いたというか、冷静に何が良かったのか、改善点はどこか等もう少し振り返りたいなという気持ちです。
吾郷:僕は今すごい気持ちが昂ぶっていて、改めて活動を振り返って、飯石の今後に新しい光を残せたんじゃないかと充実した気持ちです。

(イベント最終日に飯石地区の皆さんと集合写真)

ー今回の活動は吾郷さんの言っていたように、まさに光を残す取り組みだったと思いますが、改めてインターンの内容を教えてください。
吾郷:今回のインターンでは、飯石地区計画を自分事として住民のみなさんに知ってもらうために竹灯籠を実施するという内容でした。もともと予定されていた報告会がコロナの影響で中止になってしまって、そんな状況だけどできることはないかと、2020年夏に住民の方と大学生がオンラインで「地区計画を自分ごととして地域住民に届ける」アイデアを検討しました。そこで自分たちが提案したアイデアの一つが竹灯籠です。
松村:地区計画の中に鳥獣害対策があり、鳥獣害対策には里山を管理する必要があるんですが、飯石地区には竹の密集地が多くて竹の活用策を考えているという話でした。また平成28年に閉校した飯石小学校の活用を推進する住民有志のチームもありました。そこで住民みんなで竹灯籠を製作して、小学校の校庭で光を灯すようなことができれば、そのどちらにもつながるかなというのが活動のスタートで、今回のインターンではその実現を目指しました。

(イベントの準備を飯石地区の皆さんと一緒にしている2人)

ーチャレンジラボから継続しての活動ということで、もともとお二人がチャレンジラボに参加したきっかけはなんでしたか?
松村:僕は生まれも育ちも大阪なんですけど、大学の活動の中で大阪の島根県事務所の方と連絡する機会があって、そこで雲南市のチャレンジラボを紹介してもらいました。地元や大学の取り組みで地域と触れ合うことはあったんですけど、地域自主組織でのインターンシップという経験はなくて、地域によそ者の自分がが入って取り組む内容のインターンシップは初めて見たので、思い切って参加を決めました。
吾郷:僕は逆に雲南出身なんですけど、14年間野球一筋だったので地域で活動した経験がなくて。今は広島の大学に通っているんですけど、就職する際には雲南市に帰ってこようと思って、雲南のことを調べていたらたまたまチャレンジラボの募集を見つけました。最初は、地元の大東での活動と悩んだのですが、あえて地元ではないところで活動することで得られることもあるのかなと思って飯石にしました。
ずっと野球しかしてこなかったので、このままでいいのかなと思ってて、勇気を振り絞って参加しました。今思えば、オンラインだから参加できたんだと思います。最初から現地だったらハードルが高く感じてただろうと思います。

(チャレンジラボの最終報告の様子)

ーチャレンジラボを終えた時はどんな気持ちでしたか?
吾郷:僕は、別の大学の方と繋がれることが特になくて、そういう子たちと参加できたことがいい刺激で成長の場になりました。学部も違う、住んでいるところも違う、大学も違う、という中で、リーダーという立場をいただき、先頭でぐいぐい引っ張ることだけではなくて、見守るリーダーとしてうまくチームをまとめられたんじゃないかと思います。オンラインで離れていても、思いが共有できればいいものができるし、地域の方も喜んでいただけたことがすごく良かったです。
松村:地域の方から感想をまとめていただいたんですけど、やって良かったと思える内容ばかりでした。地域の方ともちろん関われたし、事務局の人とお話しできたんですけど、オンラインだったこともあり、現地に訪れていればもっとできることもあったのかなとモヤモヤしていました。なので実際に行きたいねという話はあったんですが、まさか本当に行くことになるとは思ってませんでした。

自分の力でイベントを作り上げたい

ーそこから約半年後の今回のインターン、現地ならではの面白さはありましたか?
吾郷:大学進学して一人暮らしを始めてから隣近所の顔もわからない状況で、改めて雲南に帰ってきて隣近所のことを分かったり野菜のおすそ分けがあったり、そういうとこが好きなんですよね。でも何より、自分たちの提案したことを地域の方が一緒になって実現しようとしてくださっていることがすごく嬉しくて、自分にもできることがあると思って、じゃあぜひ自分の力でイベントを作り上げたいなと思いました。
松村:実践型インターンシップの募集があった時に、行かなかったら後悔すると思いました。自分たちが提案したものが成功したとしても、その現場に自分がいなかったらやだなと思って参加を決めました。猿とか猪とか鹿がいることが当たり前に生活に溶け込んでいること、共存していることなんかは絶対に大阪では経験できないと思いました(笑)。

ー活動で難しかったこと、苦労したことはありますか?
松村:大阪に緊急事態宣言が出てしまって、本来の期間からかなり遅れての実施となったのでモチベーションが徐々に下がってきて、もう現地に行くことは叶わないかもしれないと諦めていた時もありました。それが、飯石の皆様がなんとか実現する方法を検討してくださった時は不安以上に楽しみな気持ちでいっぱいでした。
現地に来てからすぐに住民の方の前で自分たちの取り組もうとしていることを説明する機会があったんですが、自分たちのやろうとしていることを地域の方々に分かりやすく伝えることがとても難しかったです。
だた日が経つに連れ、うまく企画を伝えることができるようになり、地域の集まりに参加してく中で徐々に住民の方にも協力していただけるようになりました。自分たちから声かけしてくことの重要性に気づいて、そこからはいっぱい足を運ぶようになって。顔を出せば出すほど、こうしていたらうまくいくんじゃないかと、やりがいや楽しさ、自信につながっていきました。

(インターン開始1週目で地域の方にプロジェクトを説明する様子)

吾郷:僕は前に進んでいるという意識があったので最初から割と前向きな気持ちでした。現地での活動もすごく楽しく取り組んでいたのですが、活動期間中にU.C.Cに関わる他の大学生と話す機会があって、同世代や年下なのに自分よりもたくさん地域で活動していてすごいなと圧倒されてしまいました。もっと早く地域活動に取り組んでいたら…と後悔していたのですが、地域の方に話を聞いてもらう中で、今、目の前にあることに一生懸命取り組んでいこう!という気持ちになりました。

ーお二人とも悩みながらも前に進まれたんですね。では活動を通して一番印象に残ってることを教えてください。
松村:いろいろあるんですけど地域のエネルギッシュさに驚きました。最初住民の方には、竹灯籠のイベント当日にお客さんとして来てもらう予定だったんですけど、自分事にしてもらうという意味でも、やっぱり準備段階から協力していただこうという話になって。皆さんに呼びかけてみると自分の想像よりたくさんの方が来てくれて、準備も前倒しで終わって、そのパワーというか協力の凄さを実感しました。何よりも皆さんに楽しみながら準備していただけたのが嬉しかったです。

(地域の皆さんが楽しみながら準備に取り組んでいる様子)

吾郷:僕も準備の時にたくさん人に手伝ってもらったことが印象に残ってます。最初は結構力の要る作業もあったので、大人の方が多かったんですが、小学校で作業するようになってからは子ども達も手伝いに来てくれて、そういった大勢の方々とのふれあいが何より楽しかったです。

(子どもたちと一緒になって準備する様子)

ー今後やってみたいことはありますか?
松村:飯石との関わりは続けていきたいと思っています。イベントごとや竹灯籠などに声をかけていただければ、コロナの状況次第ですけどまた参加したいです。
吾郷:これから学んでいくことを飯石の皆さんとも共有できるといいなと思います。また飯石だけでなく、自分の地元の自主組織とも関わりを持ちたいし、こうした地域での経験を活かせるような仕事をしていきたいです。

ー最後にこの記事を読んでいる方に向けてメッセージをお願いします!
吾郷:雲南市の高校だったら、高校生の時に参加できるんだったらそのうちから地域の活動に取り組んでほしいと思うし、大学に入ってからも大学の中でやるんではなくて、一歩外に出ることで別の世界が見えるし成長ができるし自分でもはっきり分かるくらい大きくなれる場所だと思うので、ぜひ地域の活動に参加してもらいたいです。あとは、地域は何もないわけでなく素敵な魅力が当たり前になって気づかないだけなので、そこにも気づいてもらえたらなと思います!
松村:地域の方々、きてくださったかたや協力してくださったみなさまあっての竹灯籠のイベントができました!またイベントがあれば呼んでほしいし、また参加することで恩返しになると思うので、また呼んでください!

(インターンで切磋琢磨した吾郷くんと松村くんの別れの場面)

(取材・編集:UCC事務局)