【インタビュー】石碑に残る想いを紡ぐ

みなさんは文字の彫られた石「石碑」を見かけたことはありますか。

石碑は、先人たちが後世にメッセージを残すために石に文字を刻みこんだものです。しまねアカデミアが主催する「石碑プロジェクト」は、先人が石碑に込めた想いを辿り、それを受け取った人たちで様々な形で現代に蘇らせようとする取り組みです。

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今回お話を伺ったのは石碑プロジェクトのなかで、雲南市で石碑調査を実施した4人の島根大学生です。

今回取材した大学生

左から田邊さん、山本さん、前田さん、森下さん

■田邊 瑞菜
所属:島根大学  法文学部法経学科 3回生
出身:岡山県岡山市
雲南の好きなところ:優しい人々とのんびりできる町並み

■山本 蓮
所属:島根大学総合理工学部2回生
出身:鳥取県三朝町
雲南の好きなところ:良い意味で期待を裏切らないほどの田舎っぽさ

■前田 翔天
所属:島根大学法文学部3回生
出身:鳥取県鳥取市
雲南の好きなところ:温かい地域の皆さんと、昭和の名残りがある景観!

■森下 梨那
所属:島根大学 生物資源科学部1回生
出身:三重県鈴鹿市
雲南の好きなところ:街並みとその周りにある自然

地域の方とつながることを第一目的に

━━石碑調査隊のポスターを拝見しました。今回のプロジェクトはどのような形で取り組まれていったんですか

森下)最初に雲南市の石碑情報について簡単な聞き取り調査をして、それを元に地域の人から情報を寄せてもらうためのアンケートフォームを作りました。

田邊)フォームやチラシは山本くんと前田くんが作ってくれて。それでできたものを地域の交流センターに置いてもらったり配ったりしました。そこに石碑の名前とか由来とか場所とかわかる範囲で書いてもらうっていう。

森下)そのあとはフォームに来た情報を手がかりに、現地調査に趣きました。連続して活動する日は雲南市内に宿泊しながら、調査結果をまとめていくという流れでした。

実際に使用されたポスターの写真

━━もともと石碑への興味みたいなものをみなさんお持ちだったんですか?参加のきっかけを教えてください。

前田)大学からプロジェクト参加募集のメールが来て参加っていう感じですね。春休みの間に地域の方々と関わってみたいと思って参加しました。

森下)私も募集が来た中で、歴史関連のプロジェクトなのかなと思って参加しました。

田邊)コロナ禍で大学外に出る機会があまりなかったんですが、石碑PJは現地に赴いて地域の方々と交流しながら活動できるというところに魅力を感じて参加しました。

山本)僕もとりあえず参加して、行ってみたら石碑だったという感じで。なんで石碑なんだろうという気持ちはあったんですけど、人や地域の方とつながることを第一目的において参加していたのが大きいので、切り口自体はどんなものでもよかったのかもしれないですね。

━━日常生活で石碑を意識する機会はあまり多くないと思うんですが、取り組みを進める上で難しかったことなどありましたか?

森下)最終的は40くらいの石碑を報告したんですけど、石碑の定義がわかりにくいから、フォームだけだと思ったより集まらなかったんですよね

田邊)現地に詳しい人がいて、その人に案内してもらったりもしたんですけど、探しに行く途中で道を通ったら「あ!石碑!」みたいな

山本)石碑も年季が入ってるものだと、何書いてあるか読めないというか、なんのためのものなのかわからないのも多かったよね

田邊)報告の時には由来みたいなものも合わせて提出するんですけど、草書体で文字が読めなかったり、苔が生えて字が潰れちゃったりがあるので、部分的にしか解読できないのもありました。

森下)でも図書館で調べたりしたら、載ってるのもあったりしてそういうのはありがたかったです!

━━石碑の文章を解読する方法が書いてある本があるんですか?

山本)いえ、郷土資料みたいなものがあって、それを見て調べてました。

田邊)地区ごとでまとめられたりしてるんですけど、その区分けも当時と今では違ってたりして、調べたい石碑の情報がどの資料に載っているかを探すところからだったので大変でした。

森下)でもたまに薄くて読みやすい資料もあったりして、その情報はとても貴重でした。

石碑に刻まれた文字を解読中

━━なるほど!今回のみなさんの活動も後世に役立てられそうですね(笑)。

田邊)それこそ、三新塔の交流センターには三新塔の石碑情報がまとめてあったりしたんですよ。

森下)調査対象地域にある図書館とかだと地域の郷土資料が揃っていたりするのでよかったですね。

帰ってきた感がすごかった

━━みなさん仲が良い印象ですが、もともとお知り合いだったんですか?

田邊)それ、他の方からもよく言っていただくんですけど、皆このプロジェクトが初対面なんです。

前田)僕は途中参加できなかったりもして、直接会うのは今日で3回目くらいですね。

━━そうなんですね。チーム作りのコツというか、意識されたことみたいなのがあったりするんでしょうか?

森下)いや、それが特になくて(笑)。プロジェクト中に雲南で宿泊した時みんなで喋ったり、全員ノリがよかったと言うか。

山本)そうだね。なんだかんだで最初からこんな感じでした(笑)。

━━実際に雲南を訪れてみた印象はどうでしたか?

森下)実はみんな県外出身で、雲南にくるのは初めてなんですよね。

前田)自分は鳥取出身なんですけど、風景が似ているからか、帰ってきた感がすごかったです。

田邊)木次駅の周辺で活動することが多かったので、意外と栄えてるなって印象です。大きなスーパーもあったし。

山本)昔ながらの商店街もあって、昭和っぽさもあったというか。昭和の人情みたいなものを感じましたね。

━━人情というと、地元の方との交流の機会も多かったですか?

田邊)そうですね。活動中は石碑の場所を案内してもらったり、郷土資料を貸してもらったりという感じでした。

山本)初日の午後から活動開始だったので、僕は午前中に来て他のDIYのイベントに行ったりもしました。

森下)あと地域で挨拶運動みたいなものをされていて、他所から来た自分達にもフレンドリーに接してくださって嬉しかったです。

住民の方のお話を聞いて知見を深めます

みんなで考えて、みんなで何かやる感覚が楽し

━━全体の活動を通して参加してみてよかった、今後役に立ちそうだなと思うポイントはありますか

山本)イベントに参加するハードルが下がったことですね。この間も新入生のサポートスタッフとしての活動に参加していました。そこで田邊さんと再会して、石碑プロジェクトでの経験もあったので一緒に活動しやすかったです。こんな感じで、石碑プロジェクトに参加したおかげで他の活動にももう少し気軽に参加してみようと思えるようになりました。

田邊)私は宿泊した日の夜に、他の雲南市のプロジェクトに参加している大学生と交流できたことがよかったです。コロナ禍ということもあって普段あんまり大学外の方と関わることもなくって。雲南出身の学生やそれ以外の学生もいて、いろんなことを話したのを覚えています。

前田)刺激をもらいましたね(笑)。県外の学生が雲南にきて頑張っている様子とか。僕の周りでそんな人に出会うことはなかったので、印象的でした。

森下)どの体験も全部面白かったんですけど、このチームで仲良くなったりとかワイワイするのも楽しかったです。人数もだし、何より対面だったのがよかったですね。オンラインで人数が多いと、結局誰が誰かわからないまま終わってしまうことが多かったんですけど、ここだったらみんなで考えてみんなで何かやるというような感覚が楽しかったです。

談笑する4人。インタビュー中も終始笑顔でした。

山本)アンケートを作ってみたらというアイデアがあったので初めて作ってみたんですけど、それも勉強になりました。あと、地域の人と話すのも意外と楽しいなというか、自分から接しようとすればみなさん返してくれるのが嬉しかったですね。

田邊)質問することを躊躇わなくなったのもありますね。地域の方と話すと、自分はわからないけど、この人なら知ってるかもみたいな答え方をしてくれました。初対面の目上の方だと緊張してしまいがちだったんですけど、とりあえず話しかけてみることが大事だなと、コミュニケーションの重要性を学びました。

前田)雲南市は色んな取り組みが進められている印象を持ちました。実際に市内でご活躍されている方々とのお話を聞いて、僕も大学の専攻は歴史系なんですけど、まちづくりとかまちおこしとかに関心を持つことができたのがよかったです。

森下)私も学びみたいなところだと、自分で少し専門的な調査に取り組むのが初めてだったので、どうやって調査したり、まとめたりするのかがざっくりでもわかったのがよかったです。今後の大学生活でも、3年生になって研究室に行ったり、別のプロジェクトに参加した時に、今以上に効率的にできるようになるんじゃないかなと思いました。

━━最後に、これから地域で活動したい大学生に向けて一言お願いします

山本)こういった活動を一番おすすめしたいのは「本物の田舎」というジャンルを知らない学生ですね。今までは都会で暮らしてきて田舎ってどこからがそう言われているのか、肌で感じ取ることができるのが地域での活動だと思っています。一見何もないように見えるけど、沢山の素敵な方と出会えるので。工夫すれば何でもできると地域活動で学べます!

田邊)少しでもやってみたいと思ったら、ぜひチャレンジしてほしいです。学生ならではの自由さは今しかないので、興味のあるないではなく、「楽しそう」や「面白そう」などの直感で動いてみるのもおすすめです。紙面や教室の中だけの学びで満足せずに、現地に行って肌で感じる学びの新鮮さや充実さ、楽しさを体感できるのが地域活動だと思っています!

森下)私はどんな活動でもいいので取り組んでみることが大切だと思います。私自身も大学で何かをやってみたいと思うけど何からすればいいんだろうと悩んでいました。しかし、活動の内容をあえて絞らず、歴史や教育や観光など様々な分野の活動を行いました。実践を積んでいくうちに何がやりたいのかということや、活動するための道筋がわかっていきました。

何もしない時間はもったいないので行動から起こしてみるといいと思います。経験と知識とつながりも一緒に身につきその後の活動の助けにもなると私は考えています。

前田)地域には、都市部にない大きな魅力があります。魚屋さんに行けば店主が気さくに声をかけてくれ、購入した以上に品物をサービスしてくれる。道や土地を聞けば親身になって丁寧に教えてくれる。年配の方が我が子を出迎えるような笑顔で挨拶してくれる。人情味溢れる地域ならではのお付き合いには実家に帰ってきたかのような安心感がありました。

また、雲南には挑戦する若者を応援してくれるような環境が整っています。私自身、今回の雲南市での石碑プロジェクトを通してそれを強く感じました。「何か新しいことにチャレンジしてみたい」「自分を成長させたい」。そういった人がいれば、ぜひ地域に身を置いてみてほしいです。かけがえのない貴重な経験ができると思います。