【インタビュー】木次線に乗って地域の宝探し

今回お話を伺ったのは、島根県を走るローカル鉄道の一つ”木次線”、その魅力を発信する「き♡線おうえんプロジェクト」に参加した5人の大学生。大学までの通学手段として木次線が利用されることはほとんどないにもかかわらず、彼ら・彼女らを惹きつけた魅力とは何か、どのようにプロジェクトに取り組んだのか取材してきました。

今回インタビューした大学生

●三加茂歩実さん(写真:左前)
所属:島根県立大学人間文化学部地域文化学科3年
出身:島根県出雲市

●林李奈さん(写真:右後)
所属:島根大学法文学部社会文化学科3年
出身:島根県雲南市

●験馬香穂さん(写真:右前)
所属:島根大学教育学部特別支援教育専攻2年
出身:島根県雲南市

●山本頼良さん(写真:左後)
所属:島根大学総合理工学部数理科学科 2年
出身:愛知県

■中村駿大さん(写真:中央)
所属:島根大学生物資源科学部環境共生科学科1年
出身:兵庫県

主なミッション

【募集終了】「き♡線おうえんプロジェクト」ローカル線を盛り上げるプロジェクトメンバー募集!

この「き♡線おうえんプロジェクト」は、住民の日常生活や観光事業を支える木次線の利活用促進を目的に、木次線沿線を盛り上げる活動です。 木次線沿線には、豊かな自然景…

自分が生まれ育った場所で何か取り組んでみたい

━まずは今回のプロジェクトについて教えてください。

林)もともとは木次線や沿線地域の魅力発信ということで、SNSへの投稿やそのために、雲南市内の駅をめぐって魅力を探したりということで進めていました。その上で更なる利用向上に向け、最後に学生独自の目線でアイデアを提案、実践するというミッションがありました。

9月ごろから活動をスタートし、12月に中間発表を行って、FWに区切りをつけました。その時に、アイデアをたくさん出して、聞きに来てくれた方達と一緒に意見交換を行い、フィードバックをもらったんです。最終的には、遠くには行けないけど旅行したい・島根のことを知りたいという大学生を対象に3回のツアーを実施しました。

━皆さんはもともと木次線に馴染みがあったんですか?

林)私がたぶん一番馴染み深くて、高校時代、木次線で通学してました。

験馬)私と三加茂さんは馴染みはあるけど乗ってはいませんでしたね。

三加茂)出雲出身なんですけど、雲南の高校に通っていたので知ってはいました。

山本)僕と中村くんは、県外出身なので木次線を知ったのは今回が初めてです。

━全員が馴染み深いというわけでもないんですね。そうなると今回参加した動機はなんだったんでしょうか?

中村)元々公共交通や地域活性化に関心があったのが一番大きい理由です。自分は兵庫県の北部出身で、そこにもローカル線があるんですが乗車数が少ないことが課題になっていたので、その境遇と似ていることも関心を持った理由の一つです。

山本)僕は正直、なんとなくというか、これまで知らなかったこととか、やったことないことがやりたくて。地域活性化や貢献ということには漠然と興味があったのでそれでという感じですね。

三加茂)私は大学で観光学を専門的に学んでいたので、そこで学んだことを実践してみたいという想いや、反対にプロジェクトで学んだことを大学の勉強にも活かせるかなと思って参加しました。

験馬)私は木次線の駅や電車のこともそうなんですが、今回のプロジェクトを通して地元の人と交流できることに惹かれました。

林)私の場合は特殊というか、先生からこのプロジェクトを紹介してもらったんですけど、その先生が木次線がなくなると勘違いしていて(笑)実際にはおろち号がなくなって木次線自体は残るんですけど、あり得ない話でもないなと危機感を感じたのが大きかったです。あと、大学に入学して、プロジェクトもいくつかやって、3年生になった時に、自分が生まれ育った場所で何か取り組んでみたいという気持ちもありました。

みんな色が違う

━活動の途中で難しかったところ、工夫したところを教えてください

中村)SNSに投稿する際の内容をチェックしてもらってたんですけど、活動始めの頃はそれをクリアするのが難しかったですね。

林)徐々に気をつけたほうがいいポイントもわかるようになって、余裕を持って活動ができるようになったよね。おかげで最終的なアウトプットも出しやすかった。

験馬)逆に気をつけすぎにも気をつけてました(笑)みんな色が違うんですよ。ツアーをしても呼んでくる友達の色が違って、それがまた面白くて。だから気をつけすぎて、その色が失われないようにというか、各々の魅力はきちんと伝わるようにしました。
あとはいろんな打ち合わせも多かったんですけど、コロナで会うことができなかったのもやっぱり大変でしたね。

林)オンライン会議だけだと企画が思うように進まなくて、モチベーションが下がりかける中で最終報告会が近づいてきて焦ったりもしてました。

験馬)コロナが落ち着いてみんなと会えたり、企画のゴールが決まったら、そこからどんどん楽しくなっていきましたね。

━長期にわたる活動ということで、いろんな想い出があるかと思いますが、一番印象に残っていることを教えてください。

山本)フィールドワークで初めて木次線に乗った時が一番ですね。本当にもう「すごいなあ」という衝撃で。駅舎がおうちみたいで暖かかったし、駅から電動マウンテンバイクに乗って、周辺ののどかさと気持ちよさを全身で味わいました。

中村)2回目のフィールドワークの時に地元の方が、スイートポテトを作って持ってきてくださったんです。その後、プライベートでもその駅を利用する機会があったときに、またご馳走してくださって。それが一番印象に残ってます。大学生同士の新しい繋がりができたツアーも印象的でした。

験馬)ツアー関連で言うと、年明けにメンバーと対面でやっと会えた日ですね。ツアー企画の準備をコロナ禍もあってずっとオンラインでしかできてなかったんですけど、やっと進んだーという気持ちでした。

林)集まったらこんなに早いのかと思ったよね。私が印象に残ってるとこだと、1回目のツアーの時に、大学生を16人呼んで地元の商店街を歩いたら、知っている人ばかりと出会って、みんなに「何事だ?!」と驚かれたのを覚えてます。

験馬)なんとか乗ることができたけれど、バスの乗り継ぎもうまくいかなかったり。あれは反省点でもあり、いい思い出です。

三加茂)私は中間報告会で意見交換をしたときです。沿線にお住いの方や、行政の方からアドバイスやフィードバックをいただいて、皆さんそれぞれに想いを持っていることを実感しました。

林)確かに以前から沿線の皆さんから木次線への想いを聞いていたからこそ、アンケートで「またいきたい」という声を聞けた嬉しさも大きかったですね。

━活動を通して変化した木次線への想いがあれば教えてください。

三加茂)活動の中で情報収集をしたり、その最中にJRが収入情報の公開をしたりして、より木次線を守らなきゃと感じるようになったのはあるよね。

山本)確かに知ることというか、一番大事なのは興味を絶やさないことだと考えるようになりました。今回木次線沿線は繋がったけど、沿線ではない箇所はどうなんだろう?とか。それで自分が興味を持つようになったら、それを他の人に発信する機会も大切だなと。

験馬)ツアーをやってみたら参加してくれた大学生に好評だったんです。「面白いところがいっぱい」「この機会がなかったら来なかった」という声もたくさんあって。後輩たちがこういう活動を引き継いで気軽に来れる場所になっていくといいなと思います。

中村)僕はまだ1年生で、あと3年くらいは島根にいるので、その間にもっと木次線に乗りたいなと思ってます。今回の活動を通して大学の鉄道研究会にも入会したので、その活動の一環としても、他地域のローカル線との関係も持っていきたいです。

林)活動の中で、興味はあっても、実際に乗るという行動に繋げるのが難しいということを改めて感じることも多かったです。それを可能にする活動を新たにするなら、どうやって進めていくか、そういったことも考えるようになりました。

自分の考えたことを実際にやってみてほしい

━今回の経験で一番の学びはどこにありましたか?

験馬)プロジェクトを通して、住民さんから大学生が木次線に興味を持ってくれていることで十分嬉しいという声をたくさん聞いたんです。暖かく迎え入れてもらったからこそ、長い目でみて、みんなでちっちゃなことでも寄り添っていけたらいいなと思えるようになりました。

中村)地元と比較することができました。地元のローカル線への意識というか、危機感を持ったり、考えるようになっていきました。

林)プロジェクトが終わった後も、木次線の沿線の方達と繋がれたり、前より身近なものになりました。チームとして取り組んだ経験もだし、誰一人欠けないまま達成できたのも大きな経験になりました。

山本)地域貢献ってどういうものかということが少しわかった気がします。今、建設関係のアルバイトを今やってるんですけど。これも地域貢献というか、直接的なものだけじゃなくて、何かを通して、今回の場合なら鉄道を通してアイデアを実践していく。間接的にも地域貢献に繋がっているんだと気づくことができました。

三加茂)私は中間報告会で、課題を解決するために目的を明確にすると教えてもらったのが一番の学びでした。チームのメンバーや報告会で他の人からの刺激をもらえたことも大きかったです。

━活動を振り返って最後に一言お願いします!



験馬)木次線を応援したい人たちの多さに驚きました。同時に、それを行動にうつせないもどかしさを実感することも多かったです。存続のために、一人ではなく街全体で考えていくことが大事だと感じたので、これからも何か、後一歩、もう一歩、乗るための後押しができたらと思います。



林)うまくいかなかったこと、大変だったこともいっぱいあったんですけど、でもやっぱり全体を通してすごく楽しかったので、この喜びの体験も含めて、もっといろんな人に自分の考えたことを実際にやってみてほしいと思います



中村)地元の方が暖かく受け入れてくださったのが印象深いです。自分の出身も田舎なので田舎=閉鎖的というイメージがあって、活動を始めるまではそこが不安でした。でも今回のプロジェクトでは、地元の方からも積極的に受け入れてくださったので楽しく活動することができました。



三加茂)汽車にあまり乗っていない人に向けての一言なんですけど、私も、今回改めて汽車でお出かけする楽しさを見つけたので、ぜひ乗ってほしいなと思います。景色がどんどん移り変わっていく様子や、写真が好きな人はレトロなところに惹かれると思うのでぜひ!


山本)関わってくださった人たちに、お礼したいことはたくさんあるんですけど、せっかくなので、これからこういうプロジェクトに参加するかもしれない方へ。大学生は時間がない中で、就活や不安があるからできることを増やそうという漠然とした焦りからくる行動があると思います。何か武器を増やした方がいいという感覚はすごい共感するからこそ、変に焦らず、武器になる経験が得られるので、こういうチームで長期的に取り組める活動に参加して欲しいなと思いました。