経験と学びが新たなつながりを生む

この記事を読む方の中に「何をやりたいか分からない」「自分には何が向いてるんだろう」と考える人もいるのではないでしょうか。
今回取材した梶谷さんの表情は常に笑顔で、希望に満ち溢れていました。そんな彼女から発せられた「私も高校生までは何がしたいか分からずにいました。」という言葉。梶谷さんが行動するようになったきっかけ、様々な活動をする原動力について話を伺いました。

今回インタビューしたU.C.C学生


梶谷知世(19)
・島根大学生物資源科学部農林生産学科農業経済コース2年
・島根県雲南市加茂町出身
・2020年夏に開催されたU.C.C事業「うんなんチャレンジラボ」のKKYラボに参加

「鬱屈な日々」からの脱却

ー早速ですが、U.C.Cに参加したきっかけを聞かせてください。
梶谷:高校生の時に参加した雲南市役所でのインターンシップでU.C.Cのことを知って、「大学生になったら参加するぞ!」と思っていました。ですが、大学入学や授業開始の遅れなどでバタバタしてしまい、存在を忘れてしまっていて。そんな時に雲南市役所の方から紹介していただき、参加を決めました。

ー高校生の時からインターンシップされていたんですね!その活動について教えてください。
梶谷:私の通っていた高校では、高校2年生になると4日間のインターンシップが必修となっていました。私の所属していたコースでは高校のある松江市役所でインターンをする人が多かったんですが、実家の雲南から通学していた私にとって松江市役所はちょっと遠いし、何より「何をしたいか」「何に興味あるか」が分からないまま鬱屈とした日々を過ごしていて‥(笑)。結局、先生に勧められるまま実家近くの雲南市役所をインターン先に決めたんです。インターンシップでは雲南市についての説明から始まり、市内の取組を見て回ったり、そこで地域の方と交流したりしました。他にも、市の事業などの会議に参加させていただきました。
ここで印象的だったのが、職員さんが「ずっとデスクに座っていると『なんで外行かないの?』と上司に言われる。」と話されていたことです。市役所の方はずっと机に向かって仕事をしているイメージだったので、アクティブに働く職員さんのその言葉とのギャップが衝撃的で、すごいというか新鮮でした。そして何より、どんな時も楽しそうに働いておられたのが魅力的で、松江の高校から来た私を優しく受け入れて「雲南市ってこんないいところなんだよ!」と教えてくださり、とにかく雲南市への愛を感じました。そこで地域貢献の形を間近でみた私は、「こういう人たちみたいになりたい!」と思うようになりました。そこから高校卒業してすぐ就職ではなく、「大学に進学してもっと知識をつけ、勉強したい!」と思うようになりました。

感じたことを”発信”する

ーインターンシップで心境の変化があったんですね。高校生活への影響はありましたか?
梶谷:インターンシップは雲南市の魅力に触れると同時に、私自身が雲南市の魅力を全然知らなかったことに気付かされました。そうした気づきから、もしかすると同世代(10代)への情報発信が不足しているのではないかと感じていました。何かできないかと思い、高校3年生の課題研究では、雲南市を紹介する雑誌を作成しました。先生の協力はありましたが、雑誌の企画から編集まで一人でやったのですごく大変で、この時絶対雑誌の編集者にはなりたくないと思いました(笑)。ただ、そこで市役所の方から雲南市に継続して関わってくれて「ありがとう」と言われたのがすごくうれしかったです。インターンシップでつながった人たちから感じ取った雲南市の魅力を、今度は自分が発信する側に立つことができました。

つながりの連鎖

ーそこからU.C.Cにつながっていくわけですね。U.C.Cのチャレンジラボでは、KKYラボに参加したんですね。他にも情報発信をテーマにしたラボもあった中で、なぜそこを選んだのですか?
(チャレンジラボ詳細はこちら→http://www.co-unnan.jp/ch-wakamono_page.php?logid=2062

梶谷:KKYラボのテーマであった「ソーシャルビジネス」は、これからの地域を持続的にするために必要な視点なので興味を持ちました。また、大学の専攻も農業経済学なので、大学での学びを活かすという点でも、情報発信以上に魅力を感じ参加しました。ラボが始まってからは、掛合自治振興会の白築さんと大学生4名で定期的に打ち合わせをし、「地域にいかにお金を生み出すか?」「循環するための仕組みは?」といった地域に関するお金や経営について学び、地域通貨や空き家管理などいろんなアイデアを考えました。

ーチャレンジラボで学んだことは何ですか?
梶谷:地域づくりに王道がないからこそ、それぞれの地域がそれぞれの課題に悩んでいて、地域の現状や特性に合ったことを考える必要があるということを学びました。掛合地区で言うと、雲南市掛合町の中でも掛合地区は、以前から掛合町の中心であったことから役場や商店など1次産業以外で栄えてきた地区になります。中山間地域だから農業で稼ぐということではなく、掛合地区に合ったアイデアを考えることが大事だと思いました。

ーチャレンジラボに参加しての感想を聞かせてください。
梶谷:高校生の時からU.C.Cのように地域について考えることをしたかったので、参加できたのはもちろんのこと、オンライン上でも全国の大学生や実際に地域で活動をする人と出会えたこと、これまで想像止まりだったことが他の学生や地域の方と協力することで実感に変化しましたそれをチームになって話し合うことで想像に肉がつくのが目に見えて分かって、それらを通して自分の成長につながる発見ができたことが嬉しかったです。
また、私は論理的にまとめて話すのが苦手で、「話せるようになりたい!」と思うようになりました。一緒に取り組んでいたメンバーには、リーダーシップに優れていたり、まとめることがうまかったり、全体的に俯瞰できたり、すごいなと思うところがたくさんあったので、「私もこうなりたい!」と思うようになりました。


KKYラボを終えた後も雲南で活動を続けていると伺いました。その活動について教えてください。

梶谷:雲南市と地域自主組織連絡協議会が共催している、地域経営カレッジに参加しました。地域経営カレッジとは、雲南市内の各地域の住民が主体となり、たくさんある地域課題の中からテーマを設定しそのテーマに対する企画(方策アイデア)を進めていくことをミッションにしています。私が参加したチームでは、加茂町をフィールドに「若者・女性の社会参画推進・拡大」を目指した情報発信の活動をしました。その中で私たちはターゲット世代の多くが利用するSNSでの発信に注目しました。そこでカモんスというアカウントを作成し、Twitter・Instagram・YouTubeを中心に15~30代に向けて情報発信しています。SNSでの発信は初めてだったので運営は大変ですが、企画やデザインなどで今までの経験を活かすことができ、うれしかったです。

ー地域経営カレッジに関わる中で、苦労したことや楽しさはありますか?
梶谷:実は、今回の地域経営カレッジへの参加のきっかけも、チャレンジラボの時にお世話になった雲南市役所の方からの紹介でした。知り合いからの紹介ということもあり、具体的な活動内容やメンバーなどを知らずに参加したので、初めての顔合わせで圧倒的平均年齢の高さに衝撃を受けました。「場違い感ハンパない…」と思いましたね(笑)。
ですが活動を続ける中で楽しさに気づき、徐々にその気持ちは無くなっていきました。特に、テーマに沿った若者である私の意見が還元されている感覚があったこと、それに上の世代の方の想いも重なっていくことがすごく刺激的でした。そして何より、飲食店や風景などこれまで知らなかった加茂を知れるのが楽しかったです。

ー地域経営カレッジを終えてからも活動を続けるのですか?
梶谷:はい。カモんスのアカウントを運営するメンバーとしてこれからも継続して関わっていきたいと考えています。実際に、カモんスは4月から加茂まちづくり協議会が運営することになっていて、私もその一員として運営を継続します。これをきっかけに新たなイノベーションが生まれたり、誰かがそれを生む手伝いができたら、と思います。
また先日まちづくり協議会の方から相談したいと連絡がきました。内容は、学童のスタッフの方がカモンすを通して情報発信をしたい、とのことでした。こうして紹介から新たなつながりができて、とても嬉しかったです。
今、加茂で私は「若いのに地域活動に参加する」という珍しい存在で、その珍しさのおかげで声をかけてもらっている部分があると思うんです。でもいつか私が地域の一員として当たり前になっていつも加茂のために頑張ってくれてありがとう、と今よりもっと言われるようになったら嬉しいなと思います。

ー大学の授業や課題も忙しい中で複数のプロジェクトに並行して取り組むことは大変なことだと思うのですが、それでも梶谷さんを突き動かす原動力は何ですか?
梶谷:個人的にあんまり疲れるという感覚はなくて。統一性のない活動でも、やっててどれも楽しいっていうのがあると思うんです。なんと言うか、地域の役に立っていると実感できることが本当に楽しいです。あと、私は感情で動くタイプでとにかく人から褒められるのがすごく好きなんです。自分の行動に対して人からリアクションをもらうのが好きで、褒められると嬉しくなってもっと褒められるために頑張りたくなるんです(笑)。

ーいろんな活動に対して楽しそうに取り組むからこそいろんなところから誘いがくるんでしょうね。
梶谷:そうですね。元々、大学生になって出会いを大切にしたいと思ってて、2つのことを意識しています。1つは人との交流が難しいからこそオンラインでの出会いを大切にすること。これは、入学早々始まったオンライン授業で感じたことです。多くの授業がオンデマンド型や従来の講義型であるのに対して、1つだけ対話型の授業があったんです。その時、人と話すことで「ストレス発散」できること、対話で「場の空気感の共有」ができるということに気付き、オンラインでも人と交流することが大事だと思うようになりました。もう1つは高校までの狭い世界での鬱屈とした人生の分を取り戻せるような自己成長、交流の機会に挑戦することです。これはU.C.Cに参加して痛感しました。同世代の大学生で、いろんな経験や考え方を持っていて。そんな人たちと接する内に対人スキルが不足していることに気付き、もっと成長したい、挑戦したいと思うようになりました。
この考え方のおかげで、1年間で数え切れないほどの経験を積むことができました。今は自分でも気づいていなかった、本当はやりたかったことが爆発しているハイな状態かもしれないですね。同級生が今の私を見たらびっくりすると思います(笑)。

つながりの先に見えたやりたいこと

ーそれでは、梶谷さんがこれからやりたいことを教えてください。
梶谷:雲南市とはこれから仕事などでどれだけ離れたとしてもライフワークとして関わり続けたいです。この雲南市への地域愛の形成ということで、市内の高校生への地域教育は充実していると思います。ですが、中学生への地域教育は未だ行き届いていないように感じており、中学生の時期から地域と関わる機会が増えたらいいな、という思いから中学生の地域教育にも関心があります。
また、自分に合った形で地域と関わることも大事だと思っています。地域への関心や得意不得意は個人差があります。それに応じて個人が関わり方を自由に選択できるといいなと思います。そんな地域のあり方を可能にする仕組みづくりを目指したいです。それがいつもありがとうと言ってもらえるような活動になったら嬉しいです。

最後に

ー最後に、記事を読んでいる方に伝えたいことをお願いします!
梶谷:これからの地域を担っていく方、地域活動に関心を持っている方に伝えたいです。自分がやってみたいことやなんとなく地域に興味がある、という想いを自分から発信していく必要があると思います。そしたら応援してくれる人が絶対にいるので。私もやりたいと騒いでいただけの時期もあったけど、その頃が今に生きています。雲南市に関係なく自分のふるさとを大事に、心の片隅にでも想い続けるというのも参画の形だなと思います!

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取材・編集:佐藤 圭悟